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松田 繁 著『別府、浜脇町鉱泉に関する取調書類』

【 序 文 】

別府、浜脇町鉱泉に関する取調書類
明治参拾八年三月調に係る分

 大分県速見郡別府浜脇両地方を初め、其附近の温泉地に於いて、近来所々に穿井を試み、温泉を湧出せしむるに至りてより、温泉の数は頓に増加し来たり。現時、別府浜脇両地方のみにても温泉湧出の箇所百九十余の多きに達し、尚漸次其数を増加するの傾向あるよりして、同地方の泉源に支障を及ぼし、或は旧来の温泉に影響を及ぼさざる哉の憂慮を生ぜしむるに至れり。過日、此件に係る調査を拙者へ依託せられ、幸いにして、貴県技手姫野馳男、同伊丹賢平両氏の助勢に預り、客月十六日より踏査を初め、同月末に調査を終了せり。素より、此問題たるや至難の事にして、短日の調査を以て、之を解決するは容易にあらずと雖も、調査中に得たる事実と卑見とを合せ、大分県別府四近温泉調査報告として及報告候也。
 明治三十八年三月二十八日

鉱山監督官 松田 繁

 大分県知事 大久保利武殿