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地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.55
青海湖畔の「いい湯だな」

 1988年の夏、中国で最大の湖・青海湖を訪ねた。その一帯の水文調査のためである。
 湖の南岸の「哈図(hatu)」という小さな集落を基地にしてあちこち訪ねているうち、北岸の「剛察(gangcha)」という、その辺りでは最大の町の郊外に温泉があると聞いた。行ってみると、なだらかな傾斜の草原に、ほのかに湯気をたててお湯が湧きだし、石灰華のテラスもあって、のんびりとした景色である。
 泉温は55.5℃、pHは6.5。手に触れた感じでは柔らかな湯と思われたのだが、風呂場らしいものは見当たらない。折角の温泉なのに、楽しむことが出来ないまま、その地をあとにせざるを得なかった。
 「それでは、いい湯だな、ではないではないか」と言われそうだが、青海湖畔で、あのヒット曲を確かに聞いたのである。
 1980年代頃までの中国は、たいていのところは、お世辞にも「きれい」とは言えなかった。青海湖のように中央から遠く離れた地域は尚更で、哈図の宿舎のトイレは劣悪、風呂無し、シャワーはあるものの、給湯が制限されてほとんど使えない、という状態だった。
 ある夕方、管理人が「今日は風呂がある」と言う。やれ嬉しやと出かけたら、半分壊れたようなコンクリートの建物の中のプールみたいな馬鹿でかい浴槽に、大人から子供までが、それこそ芋の子を洗うように浸かっていた。
 中国の人は他人に素肌を見せることを嫌うと聞いていたが、そうでもないようだ。素っ裸で風呂を楽しんでいるようで、大変な騒ぎである。と、突然、おなじみの歌が響いてきた。歌っていたのは子供たち。もちろん、日本語ではなく中国語。じつに楽しそうだった。
 現在、剛察を経てチベットに至る高速列車が走っていると聞く。日本からの旅客も多いそうだ。私が訪れたころ、剛察の温泉は生活用水だけに使われていたようだったが、途中下車すれば、「いい湯だな」と楽しめるようになっているだろうか。


青海湖(西海:ココノール)の諸元(1980年頃)
 東西 106km;南北 63km;湖水面積 4430km2
 平均深度 20m;最深 40m;湖水面の高さ 3200m
 水温 夏期 7~8 ℃ ;冬期 -2~3℃
「剛察」の北東の「熱水」 には♨印が付いている。


剛察の石灰華テラス


剛察の坊主地獄


剛察の源泉:55.5℃, 260 L/分



参考:熱水の温泉場

【温泉の顔】
http://www2.oita-press.co.jp/nie/img_file/worksheet/13722377133157-1.pdf

-公益社団法人大分県薬剤師会発行『おおいたの温泉の顔』(2013)に掲載-



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別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介します。