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地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.57
中国雲南省の熱海

 中国は知る人ぞ知る温泉大国で、全国に約3000ヶ所もの温泉地があると言われている。その代表格が雲南省の騰冲(Tengchong)。ミャンマーとの国境に近い辺境の地であるが、温泉があることは古くから知られていたらしい。最初の記録は、明末期の1639年に地理学者・徐霞客が著した「徐霞客遊記」である。1868年には、イギリスの探検隊がイラワジ川(エーヤワディー川)を遡って騰冲に達し、温泉があることを記録している。
 騰冲にはいくつもの温泉地がある。そのうち、熱活動が最も活発な地区が熱海(Rehai)。渓流に沿う2キロほどの範囲に、最高97度に達する大量の温泉水が湧き出している。
 熱海という名が付けられたのは、1930年代のことだそうだ。近隣には華僑を輩出した和順(heshun)という集落があるから、海外情報は豊富だった筈で、日本の熱海を擬したのかもしれない。ちなみに、和順には炭酸泉があり、瓶詰めにして出荷している。
 熱海には沸騰泉や噴気のほかに、石灰華や珪華など温泉沈殿物の大きなテラスもある。1993年の暮れに訪れたときは、観光客のための通路などが整備され、源泉には名前が付けられていた。たとえば、ブツブツ泡立つ珍珠泉、飲めば子を授かる懐胎井と言った具合である。直径約5メートルの円形の湯池・大滾鍋の色は青っぽく、90℃の湯でゆでた卵を売っていた。やや小型ながら、別府の海地獄にそっくりである。
 圧巻は澡塘河という、幅・高さとも3メートルほどの湯の滝。90℃を超える湯が滔滔と流れ落ちるのは大迫力であった。
 その豊富な熱エネルギーを使って地熱発電をする計画だと聞いたのだが、実現したかどうかは分からない。
https://www.arachina.com/kunming/attraction/baoshan.htm


騰冲近郊にある小火口(マール)


和順の炭酸泉


熱海温泉全景


澡塘河:95.8℃


大渀鍋(青色):88.7℃, pH-3


懐胎井:81.2℃, pH-8


温泉沈殿物のテラス


熱海温泉の医療部
医師(中医)が常駐している


瑞滇自然湧出:最高76.7℃


竜陵下消温泉: 98.4℃
1974年、竜陵地震で噴出
非常に強勢なので、湧出口に石を乗せて抑制


【温泉の顔】
http://www2.oita-press.co.jp/nie/img_file/worksheet/13722377133157-1.pdf

-公益社団法人大分県薬剤師会発行『おおいたの温泉の顔』(2013)に掲載-



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別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介します。