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地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.64
高いか安いか

 雲仙の活動は続く。溶岩ドームが成長すればしたで、それが崩落すればしたで、その都度、専門家がコメントを求められることになるが、解答することのできる人はそうそうたくさんいるわけではない。テレビや新聞に出ずっぱりのO先生もK先生も、私と専門は違うけれども、よく存じあげているので、この非常事態に何を言うかとひんしゅくを買うかもしれないが、ありていに言えば、気の毒でしかたがない。

 健康のことはもちろんとして、いかに専門家とはいえ、答えることのできないことだってあるだろうに、それに答えねばならないという精神的苦痛はそうとうのものだと思うからである。

 地球を相手にする科学の基礎は、現象の観測にある。数多くの観測データの中から特徴をつかみ出し、理論化することによって、ようやく将来の予測が期待できるようになる。つまり、経験がものをいうのである。

 火山の噴火はまれにしか起こらない。それだけ、経験に乏しい。予測がむずかしいゆえんであるが、そうとばかりも言っていられない。実際、雲仙が活動すると、ほかの火山はどうなのかということが大きな話題になる。

 だから、せめて異常ぐらいは検出できるようにしておくことが肝要だろう。そのためには不断の観測が不可欠だが、さまざまな困難がある。ひとつだけ例を挙げる。最小限必要な微小地震の常時観測とデータ解析装置だけで、1億円はする。高いか安いか? 皆さん、どう思いますか。

ー1991.7.2 大分合同新聞 別府版ー

 

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別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介します。