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第41回全国湯治宿レコメンド3選「鳴子・箱根・鉄輪」

執筆者湯治ぐらし代表・スクランブルベップ代表
温泉マイスター 菅野 静

 「湯治」・・・別府温泉地球博物館や温泉マイスターに所属されている皆さんはこの言葉をご存知だと思いますが、湯治宿の数も全盛期と高度経済成長期における日本の温泉地類型に比較して、現在は3%程度だという論文を読んだことがあります。(山村順次氏(1998):『新版日本の温泉地』)また、日本全国を見渡してもこの文字を正しく読める方は、先般立命館アジア太平洋大学で講義をさせていただいたときも、実に受講生の3%程度しか「湯治」をご存知なく、「とうじ」とも読めないことを知りました。そのくらい、湯治はもはや馴染みやニーズがなくなってきていることが現実です。

しかしながら、湯治とは、湯で体を治すこと以外に、心を癒し、裸になったコミュニケーションを助長し、また食事についても改善を促してきました。これは、今の日本に、ひいてはCOVID-19を経験する前も、経験した今も、全世界に非常にマッチした、必要なライフスタイルのひとつであると、私は考えています。

大阪、東京、上海でサラリーマンをしてきた私は、自らのライフスタイルを温泉・湯治によって劇的に変化させたいと考え、2019年3月に、湯治場のメッカだと一目惚れした別府・鉄輪温泉へ移住してまいりました。湯治をくらしに取り込み、当たり前である温泉・食事・コミュニケーションを、WHOが定義する健康「肉体的・精神的・社会的な健康」になぞらえ大切に取り扱う「湯治ぐらし」を、多くの方々に体験してもらいたいと考え、「湯治ぐらしシェアハウス」を、現在鉄輪・火売(ほのめ)エリアで3軒経営しております。

湯治ぐらしfacebook:https://www.facebook.com/TOJIGURASHI

鉄輪に移住する前に訪れた温泉・湯治場は170箇所程度ではありますが、その中から私の湯治人生を変えた3つのおすすめ湯治宿をご紹介したいと存じます。

1.湯治の魅力を広く伝える使命を感じた「宮城県東鳴子温泉 旅館大沼」
2.湯治は現代社会にマッチしていると気付かされた「神奈川県箱根温泉 天山湯治郷」
3.これが理想の湯治ぐらしだ!と感じている「大分県鉄輪温泉 双葉荘」



1.湯治の魅力を広く伝える使命を感じた「宮城県東鳴子温泉 旅館大沼」


http://www.ohnuma.co.jp
百年ゆ宿 旅館大沼
〒989-6811 宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯34
tel:0229-83-3052(代) fax:0229-83-3927
地図:https://goo.gl/maps/Zrk6zwiBuFRz56wD6

都会でバリバリ仕事して、ただ温泉に浸かり、読書をし、ふわふわと思考を巡らせるような温泉旅を私は繰り返していました。その頃、湯治という言葉に出会い、まさに私がやっていることは湯治だ!と思い、パソコンで湯治・宿と打ち込み、調べて出てきて心を鷲掴みにしたのは、「旅館大沼」さんでした。

ネット社会において情報の出し方がものすごく上手で、そして心に寄り添ってくれるようなサービスとおもてなしと考え抜かれた湯治プログラムに、心惹かれました。

辿り着いたそこには、心が洗われる「母里の湯」がありました。季節ごと美しく、鳥が鳴き、風が立ち、葉がざわめくここでただひとり、温かでなめらかな湯に身を委ねていることが、何よりも心の放電になったのを今でも覚えています。何度もリピートしました。自然に包まれることがいかに大切かを知り、こうした大きな自然の営みから生まれてきただけのちっぽけな人間であることを知るようで、悩みや不安は飛んで消えていきました。




ここのキッチンも素敵で便利。採れたての野菜や宮城仙台名物の牛タン等を焼きながら、またスーパーで買ってきたお刺身を中心におかずを作ったり等、お隣のお部屋の常連さんとここで毎日、朝昼晩と自炊をしたりするのが本当に楽しかったです。そうして裸のコミュニケーションで、心も体もほどけていくのを実感しました。この経験を、湯治の世界を、もっとどうにかして伝えなくては! 形にしなくてはと思い至ったのもここであり、また、その背中を押してくれたのも、旅館大沼の五代目湯守の大沼伸治さんだったので、私の大切な場所でもあります。





2. 湯治は現代社会にマッチしていると気付かされた「神奈川県箱根温泉 天山湯治郷」


https://tenzan.jp
天山湯治郷
〒250-0312 神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋208
地図:https://goo.gl/maps/TZTnnsSZapvLdg7z7

湯治は、本当にニーズがないのか?本当に忘れ去られていいのか?・・・東北を中心に湯治宿巡りをしていた頃、鄙びていく湯治街を眺め、若者も利用しなくなってきている湯治宿を眺めながら、それでもどうして私がここまで湯治に惹かれるのか、わからなくなってきていました。が、ここ天山湯治郷に辿り着いたとたん、その理由も、そしてニーズがなくて忘れ去られることへの憂いは、一気に吹き飛んだ場所です。

湯治に惹かれる理由は、やはり人間のリズムと合っているからだ。ひがな、ひねもす人間であり、心地よく生きていたいのが当たり前で、無理をする仕事やスケジュールを作っている自分が心地よくないだけなんだ。好きな仕事もスケジューリングもいつしか見えない鎧になっていく。好きなのにうまくいかない。責任感も強すぎる。だからリセットしてふうっと深呼吸する場所が必要なんだ。湯治場は、それを取り戻すための手段になりうる、心身のリセット・蘇りの場所だからだ。そんな当たり前に改めて気づくわけで、かつて湯治してきた日本人と、現代とが、やっぱり何ら変わらないと合点がいきます。


ニーズがないなんてことはきっとなく、忘れ去られようとしているのはちゃんとPRしたりこれっていいよ!と声をあげて言っていなかったり、そうしたことがフォーカスされていないわけだから、私はちゃんと硫黄。じゃなくて言おう! そう自分の中と外側を照らし合わせていくプロセスをここで経験しました。

ここは現代に湯治を、人間の気持ちいいリズム、歴史、温泉へのこだわり等、建物・湯遣い・空間の作り方・サービス等ありとあらゆる手段で伝え、また、細やかなことは瓦版で伝える方法など組み合わせています。何度も行きたい現代湯治場です。




3. これがまさに究極の湯治ぐらしだ!と感じている「大分県鉄輪温泉 双葉荘」


https://www.owl.ne.jp/kannawa/futabaso/
双葉荘
〒874-0042 大分県別府市鉄輪東6-147
TEL・FAX 0977-66-1590
地図:https://goo.gl/maps/QMkbf56zeMPBYxTB8

移住してきてからCOVID-19の時代に突入し、気軽に旅がしづらくなりましたが、いまや地元・鉄輪にある双葉荘さんに、マイクロツーリズムとして先日お邪魔してまいりました。

全ての湯治部屋から直結している、宿の中心にあるのは「地獄」(噴気)であることにびっくり仰天。鉄輪の方々からは、地獄釜を中心にお部屋ができていったという鉄輪の伝統の家屋の作られ方を伝え聞きしていたのですが、ここはみごと具現化している!残っている!と目の当たりにしました。この天然の噴気の中にザルのまま食材をぽいぽいと入れておくと勝手に天然の塩分がついて、温泉に入っている間にできあがっています。「自然の力に任せる」って本当に気持ちが良くて、頼りがいがあり、安心感があります。


この地獄釜のみならず、薬師如来さまが鎮座する温泉や飲泉、蒸気を活用したオンドルや暖房など、体の養生のための360度の仕掛けがここには揃っていて、常連さんに地獄釜の使い方を教わったり、他愛のない話が弾んだり、ここには私の考える湯治場の理想形がありました。


私たちもここで自炊をし、温泉にたっぷり浸かり、新鮮な食材をただ準備して放り込むだけ。自炊室が隣接したお部屋をご用意くださり、お腹すいたな〜と思えば食事の準備をして、のんびりしようかな〜と本を読んだり、そろそろお風呂しようかな〜とチャポチャポしたりして過ごしました。今、心身は何を欲しているか耳を澄ませて、それに応えるような過ごし方、それが真の湯治なくらしだなと思うのでした。酸性!じゃなくて、こうした生き方に賛成です。



温泉を守り受け継ぎ、私たちに抜群の温泉のクオリティで提供してくださっている湯治宿のみなさんには敬服しております。今の時代にマッチする心身のための湯治をする人々を増やすことで、その文化が絶えることなく、また現代の新たなライフスタイルとして提唱していきたいと思っております。

文・写真:菅野静


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