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地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.56
モンゴルのシャルガルジュート温泉

 新しい火山がないモンゴルに温泉は無いものと、長いこと私たちは思っていた。ところが、これはひとえに情報が欠如していたせいで、中西部のハンガイ山脈周辺などには、かなり高温の温泉が湧出しているのである。この話を初めて耳にしたとき、にわかには信じられなかったのだが、2000年の夏、その温泉のひとつを訪ねる機会を与えられた。
 その温泉は、首都ウランバートルの西南西およそ700kmのバヤンホンゴル州にある。プロペラ双発機で約2時間、さらに車で2時間ほど、半乾燥の平原とそれに続く緩やかな山あいを抜け、谷間をさかのぼると、小川に沿って湯気の立ち昇る温泉地・シャルガルジュートがある。
 温泉は、およそ350m×170mの範囲にわたって、花こう岩の割れ目などからガス泡を伴って湧き出している。1日当りの湧出量は約4500キロリットル、泉温は最高88.7℃。成分濃度の低いアルカリ性単純温泉である。さわるとツルツルした感じで、蒸留水のような味がする。ガスの主成分は窒素である。
 あれこれ調べて分かった生成メカニズムの要約は、「地下およそ4000メートルの深さまで浸透した雨水が、炭酸ガスの乏しい条件下で地熱によって加熱され、岩盤の割れ目を通って湧出している」である。
 こう書けば、なんの変哲もなさそうだが、珍しい温泉なのだ。日本のものでは、丹沢などの花こう岩地域にあるアルカリ性の鉱泉が似ている。ただし、それらは全て低温である。
 シャルガルジュートの温泉はあらゆる病気に効能があると信じられており、モンゴル全国からの湯治客が長期滞在して、温泉医の指示に従って療養していた。


モンゴル・バヤンホンゴル州の位置


シャルガルジュートへの道(2000年6月撮影)


シャルガルジュート温泉の朝


湯治の小屋(ゲル)


喉の治療(温泉蒸気の吸入)


泡立つ源泉:(88.7℃, pH 9.36)

※シャルガルジュート温泉について詳しくお知りになりたい方は
「温泉科学(平成13年9月号)」
http://www.j-hss.org/journal/back_number/vol51_pdf/vol51no2_051_061.pdf
【温泉の顔】
http://www2.oita-press.co.jp/nie/img_file/worksheet/13722377133157-1.pdf

-公益社団法人大分県薬剤師会発行『おおいたの温泉の顔』(2013)に掲載-



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別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介します。