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第15回北海道夕張市「レースイの湯」
~鉄道駅の隣という好立地も、その鉄道が廃線に…~

執筆者北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授
温泉マイスター  藤井 賢彦

 夕張と聞いて何を思い浮かべますか?石炭?メロン?幸せの黄色いハンカチ?でも、夕張が北海道のどこにあるかパッとわかる方は意外と少ないのではないでしょうか。今回は北海道の割と真ん中にある夕張の温泉を紹介します。
 ホテルマウントレースイ 天然温泉「レースイの湯」はJR夕張駅の目の前、裏山はスキー場という贅沢さです。こういう立地の温泉は珍しいのではないでしょうか。温泉自体はナトリウム-炭酸水素塩泉で、モール温泉成分が少し入っていること以外、正直なところ、他のマイスターの皆さんが紹介されている温泉のような凄みはありません。しかし、毎日入っても寛げそうな優しさを感じます。北海道の内陸部ということで、四季の移り変わりが激しく、特に紅葉の時期や冬季がオススメです。夕張の冬は、気温が氷点下10℃を下回ることも珍しくなく、極寒の中、大雪に閉ざされた露天風呂という情景は、西日本ではなかなか味わえないのではないでしょうか。
 炭鉱の閉山と共に衰退の一途を辿っていった夕張市は、全国唯一の財政再生団体であり、少子高齢化が極端に進んでいる「課題先進地」です。現在の主幹産業は農業ですが、メロン、ナガイモに続く第三の作物としてアスパラガスが注目されています。「レースイの湯」の横では、温泉熱を利用したアスパラガスの温室栽培が行われていました。浴用前ではなく、浴用後の温泉排水が持つ熱を利用するので、温泉利用との軋轢はありません。再生可能エネルギーを活用した、環境に優しい温室栽培として注目を浴びましたが、大雪で温室が潰されてしまい、残念ながら温室栽培は現在休止中です。温泉にも環境にも優しく、地域の活性化にも貢献する取り組みとして、復活を強く願うものです。
 ちなみに、夕張駅はJR石勝線夕張支線の廃線にともない、平成31年3月末を以って廃止になってしまいました。駅から直ぐという好立地も、駅自体がなくなってしまうというこの不条理・・・。今後、北海道に限らず、公共交通機関では訪れにくい温泉が増えていくのかもしれません。
 なお、浴室内撮影禁止のため、温泉マイスターとしてルールを遵守した結果、残念ながら肝心の温泉の写真をご紹介できません。温泉の写真を含め、詳細は「レースイの湯」公式サイト( http://racey.yubari-resort.com/contents/spa )をご覧ください。


写真1. 温泉施設に併設された、温泉熱とボイラー室の機械発生熱を
活用した アスパラガスの温室栽培施設



写真2. 夕張駅にて、石勝線夕張支線最後の雄姿。いつもこんなに賑わっていたら
廃線にはならなかったのでしょうが。背後の建物が「レースイの湯」


    参考資料
  • ● ホテルマウントレースイ 天然温泉「レースイの湯」公式サイト(http://racey.yubari-resort.com/contents/spa )
  • ● 藤井 賢彦 (2018), 再生可能エネルギーと熱のカスケード(多段階)利用, 馬場 健司, 増原 直樹, 遠藤 愛子 (編著), 地熱資源をめぐる 水・エネルギー・食料ネクサス ―学際・超学際アプローチに向けて―, 近代科学社, 124-134.
  • ● 藤原 沙弥香, 地子 立, 荒木 肇, 藤井 賢彦 (2012), 温泉地におけるCO2排出量低減の可能性検討 -北海道・流山温泉と夕張温泉における未利用エネルギーの利用促進に向けたケーススタディ-, 日本LCA学会誌, 8(4), 356-369.


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