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シニア・マイスターのご紹介

西村 なぎさ(にしむら なぎさ)



【自己紹介】

東京で生まれ、親戚によってハワイで育てられた私は、大人になり帰国して東京で勤務していた会社で大分県出身の主人と出会い、結婚しました。子どもができてからは、仕事の疲れを癒したり、子どもと楽しい思い出をつくるため、度々関東の日帰り温泉施設に行っていました。10年前に大分県へ移住してから、ぽつぽつと全国的に有名な別府や湯布院の温泉に行ってみるうちに、「別府八湯温泉道」と運命的な出会いを果たしました。やっと名人になれたのは2016年2月、その時の達成感は今でも忘れられません。しばらくその余韻にひたっていましたが、いつのまにか2巡目を巡り始め、そこからは自然と続けていきました。また「九州温泉道」加盟施設の多くが大分県内の温泉であったり、「別府八湯温泉道」にも加盟している温泉であったことから、自然と「九州温泉道」も始めました。そして、温泉観光実践士(2016.3)や、温泉ソムリエの温泉分析書マスター(2017.6)も受講しました。

今年2021年は私が大分県へ移住して10周年、偶然にも「別府八湯温泉道」20周年の年。現在22巡目を修行中の永世名人。「九州温泉道」が10周年を迎えた昨年2020年に「九州温泉道」の2巡目を達成。その他、竹田市の奥豊後温泉郷マイスター(2018.6)や、熊本県・黒川温泉の黒川湯めぐり達人(2018.4)等の湯めぐりを達成。様々な温泉道を進める中で、実際訪れたことのある温泉施設が、地震や、豪雨による洪水・土砂災害等の自然災害により打撃を受けたことも有りました。施設ごと流されてしまったところも有り、大変ショックを受けました。しかし、そのような自然災害を受けた温泉の中には、温泉の運営や管理に携わる方たちの涙ぐましい勇気と努力によって見事に復活を成し遂げたところもあります。また昨年2020年よりコロナウィルス感染症の拡大が始まった当初、温泉道を続けることはもちろん、温泉へ立ち寄ることも叶わなくなってしまうかのようでした。しかし、私たちは新しいスタンダードのもと、生活の一部である温泉への入湯再開を果たし、温泉道の継続も可能となりました。そしてそれは、温泉の管理者や地区の利用者の理解のもと、ありがたく実現できています。私にとってそういった自然の厳しさや人々の愛や強さに出会うこともまた、温泉がもたらしてくれる学びと喜びです。

また、「別府八湯温泉道」の名人になれたことで入会できた名人会。名人会の会員になれて最も楽しかったのは、全国の名人をはじめとする温泉ファンが、毎年心待ちにして年に一度別府=「聖地」に集まる別府の温泉まつり。名人会も同まつりの運営スタッフとして活躍しています。温泉バスガイドとして別府各地の温泉を案内したり、駅前案内所テントでお祭りの会場の案内をしたりととても楽しかったですし、42.195湯の風呂マラソンで、42湯を完湯後、最後の0.195湯の別府駅前の手湯に手を入れたときは、笑っちゃうほど感無量でした。このようにスタッフと参加者の両方の立場で温泉まつりに楽しく関わらせていただけたことで、一生の思い出となる温泉関係の経験ができました。こんな風に温泉を新しい形でとことん楽しめる、遊び心満載の別府の温泉まつりは、恐らく日本を代表する祭りの一つと言えるのではないでしょうか。この面白さは実際経験してみないとわかりません。このようなチャンスをいただけて、大変幸せでした。そんな温泉まつりや名人会に心から感謝致します。

一方、鉱泉分析法指針に定められた療養泉10種類のうち、県内には8種、別府市内だけでも7種が分布していることも大変に恵まれたことです。旅館やホテルの温泉はもちろん、別府を別府たらしめる共同温泉の文化が古くから育まれてきたことも、とてもありがたいことです。その別府の共同温泉における習慣で、日本一の源泉数と湧出量を誇る「おんせん県おおいた」を最もわかりやすく実感できるのは、直接浴槽から桶でお湯を汲み、身体はもちろん、頭髪のシャンプーやコンディショナーの泡をジャバジャバと洗い流すことができる贅沢さです。せっかくの別府の温泉、シャワーがある施設においても、私は浴槽から桶で汲みたい派です。そして、沢山の共同温泉と7種類の療養泉があるからこそ、巡りながら比較ができ、感覚的にも分析書的にも違いを学ぶことができるのです。

そして、温泉マイスターに合格し、温泉マイスター協会の会員になれたことで楽しかったのは、別府市温泉一斉調査でした。グループに分かれ、担当の市内温泉施設において源泉から温泉のサンプルを採取し、会場へ戻って分析しました。普段は見れない源泉の状態をのぞいて見たり、実際温泉サンプルのpHなどをみんなで分析できる貴重な体験でした。この調査が、別府市の温泉データの蓄積や分析に貢献していると思うと、参加する喜びもひときわです。

【シニア・マイスターに挑戦した動機】

2016年3月にマイスター検定に合格してからというもの、シニア・マイスターは常に頭のすみにあったものの、その大いなる次のステップに挑戦するのはまだずっと先でなければならないことはわかっていました。はたして書けるものなのか、何について論じることができるものか、それはもっと経験を積んでいくうちに、いつか答えが見えてくるものなのだろうと信じていました。なので、上記のような温泉に恵まれた環境で、様々な形で温泉と関わっていきました。

そんななか昨年2020年にはコロナ過へ突入し、行動が制限されていく中で、温泉へ目をむけるだけでなく、自分がそれまで蓄積してきた情報や資料を振り返る時間ができ、シニア・マイスターのレポートのトピックに導かれていきました。レポートを作成する作業はとても楽しいと同時に、生みの苦しみも伴いました。自分の持つ全ての力を投じて書きました。気づいたら今年2021年は大分県へ移住して10年という節目の年。温泉マイスター検定に合格してから5年の月日が経っていました。認定いただけた時、それは夢のようでした。でも、夢のようだったのは認定だけではありません。

シニア・マイスターのレポートを書くにあたり、様々な資料を読んでみたり、また書き上げたレポートを審査していただいてよくわかったことは、別府温泉地球博物館には、すばらしい専門家の先生方がついていてくださる、ということです。この度研究を進めながら出会うことのできた学術論文や出版物の多くの文末の参考文献の中や謝辞の中に、同博物館の先生方のお名前があります。それは、同博物館には宝ものが「所蔵」されていることを意味しています。レポートを提出した際も、温泉分野の専門家の先生が一語一句慎重に内容を査読してくださり、その長いキャリアを通じて培ってこられた知識や経験を惜しみなくわかちあってくださり、非常に丁寧にご指導いただけました。レポートを提出したことで、多くを学び得ることができました。心より感謝申し上げます。

【今後の活動について】

この10年、家族のこと、仕事のこと、色々なことがありました。歳も重ね、楽しいことばかりではありませんでした。それでも温泉はいつも、私のそばで私を支え続けてくれました。どんな疲れも癒してくれて、どんな喜びも祝ってくれました。温泉を見つめる自分の姿を振り返ると、達成も後悔も至らない自分も、全て教えてくれました。大分県・九州へ嫁いだことで出会えた温泉と人々に心から感謝し、これからも自分の心がよぶ方へ目をむけて、温泉や温泉にかかわる様々なことを学んでいきたいと思います。そして、時間はかかったとしても、学び得たことをまとめることができたとき、共有し、共感していただけたら幸せです。