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九州の北東部、大分県別府市の鶴見火山群の東麓、別府湾に面する東西約5km・南北約8kmの扇状地の全域にわたって、数多くの源泉が分布しています。これが、日本はもとより、世界でも有数の規模を誇る別府温泉です。
もともとの源泉はすべてが自然湧出のものでしたが、別府八湯の項に記されているように、現在の源泉のほとんどは掘削によって得られたものです。
別府温泉については、歴史・生活・観光・医療等々、さまざまな観点からの見方があります。ここでは、地球科学的な特徴の概要を紹介することにします。
まず、平成23(2011)年3月末における別府温泉の基礎的な諸元は次の通りです。
| 源 泉 数 | 全国 27,671 大分県 4,538 (全国の16.4%) 別府 2,362 (全国の8.5 %;大分県の52.0 %) |
| 1分間当りの採取量(L) | 全国 2,686,559 大分県 291,340(全国の10.8%) 別府 87,486(全国の3.3 %;大分県の30.0 %) |
| 噴気・沸騰泉数 (ガス 水蒸気) |
全国 1,069 大分県 401(全国の37.5%) 別府 278(全国の26.0 %;大分県の69.3 %) |
| 別府市の面積:約125 km2(全国土の0.03 %) 温泉域の面積:約 40 km2(全国土の0.01 %) |
全国土のわずか0.01%でしかない約40km2の範囲に日本全体の8.5%に当る源泉が存在し、3.3%にも及ぶ温泉水が採取される状態にあること、しかも、噴気・沸騰泉という高温の源泉数が全国総数の26%を占めていることは、温泉活動の強大さを如実に物語っています。
温泉採取量の割合が、源泉数の割合より小さいことに注目してください。別府の源泉は、口径が小さく、しかも自家用のものが多いのです。これも別府温泉の特徴と言えます。
最初の掘削は1879(明治12)年に行われ(外山、2012)、以来、温泉開発が進み、1980年代に至って、温泉開発はほぼ飽和状態に達しました。図の源泉分布は1987年のものですが、現在の分布も大差ありません。
これほど多数の井戸が、別府のほぼ全域にわたって掘られたので、多種多様な資料が蓄積され、別府温泉の全貌が明らかになってきました。以下に、主な地球科学的特徴を列挙します。それぞれの項の詳しい内容は、別に記します。
| 1. | 別府温泉では山地から海岸に向かって、噴気、沸騰泉、一般温泉の順に分布する。 |
| 2. | 別府温泉から1日当たりに流出する温泉水量は5万トン(蒸気を含む)、熱量は7兆(テラ)カロリー(350MW)、塩化物イオン量は35トンである。 |
| 3. | 温泉水のほとんどは天水起源である。 |
| 4. | 別府地域の地下水・温泉水は、平均して、およそ50年で入れ替わる。 |
| 5. | 別府温泉を涵養する原熱水は、鶴見火山群の地下に分布する塩化物泉型の熱水で、温度は250~300℃、塩化物イオン濃度は1400~1600 mg/kgである。 |
| 6. | さまざまな泉質の温泉水は、原熱水と天水との混合を基調とし、地下での熱水の沸騰と蒸気の凝結、および岩石類との化学反応によって作られる。 |
| 7. | さまざまな泉質の温泉水は、立体的に分布し、それぞれの流動経路は異なる。 |
| 8. | 別府における現在の地熱-温泉系の年齢は5万年程度である。 |
| 9. | 塩化物イオンをはじめとする物質には,沈み込む海洋プレートとともに引きずり込まれる海水および海成堆積物からの寄与が大きいと推定される。 |
外山健一(2012):別府における「上総掘り」について、別府史談、25号、64-67.
由佐悠紀・大石郁朗(1988):別府温泉の統計-昭和60~62年における採取水量および熱量-、大分県温泉調査研究会報告、39号、1-6.