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別府温泉辞典

あ か さ た な は ま や ら わ

非火山性温泉

ひかざんせいおんせん

 一般的な「地温勾配または地下増温率」は、100mごとに3℃程度ですから、年平均気温が15℃の所で、1000mの深さに水があれば、その温度は45℃程度になっています。井戸を掘って、その水を冷やすことなく地表に取り出すことができれば、温泉法の限界温度25℃を優に超えていますから、温泉(しかも高温泉)と認定されます。
 このようにして得られた温泉は、火山活動とは直接的な関係がないと認識されて、「非火山性温泉」と呼ばれています。あるいは、地下深層にあるために高温となっていますので、「深層熱水型温泉」とも呼ばれます。
 地下の深い所ほど温度が高いことは、地表に向かって熱が流れていることを意味します。この熱流を「地殻熱流」と言います。これによって運ばれる「地殻熱流量」は小さく、加熱の速度は非常に小さいので、地下深層に長期間にわたって滞留した水だけが非火山性温泉になることができます。
 端的には、非火山性温泉とは、太古に土砂が厚く堆積して地層が形成されたとき、深いところに一緒に閉じ込められた水と言えます。厚い堆積層のある場所は平野や盆地などですが、実際、非火山性温泉はそのような地域で見つかっています。
 閉じ込められた水は、海水起源と陸水(淡水)起源の二種に大別されます。海水起源のものは、「化石海水型温泉」と呼ばれ、塩分濃度が非常に高く「ナトリウム-塩化物泉」の泉質を示します。特に高濃度のものは、温泉には稀な「高張泉」となっています。
 陸水起源のものは、「深層地下水型温泉」と呼ばれます。塩分濃度は低く、褐色や黒色に着色しているものが少なくありません。これは、水辺に生えていた植物が閉じ込められ、炭化したり腐食したためで、着色物質はフミン酸などの腐食酸と言われています。
 また、この過程で発生した炭化水素(主にメタン)が含まれていることがあり、引火して爆発・炎上する危険性がありますので、採取・利用に当たっては、十分な注意が必要です。
 非火山性温泉の代表的な地域は、大分平野(大分市)です(吉川・北岡、1981)。1973年の第一次オイルショックを契機として、温泉開発が本格化し、2010年の井戸数は210本を超えるほどになっています。ここには、化石海水型温泉と深層地下水型温泉の両者があります(野田、1981)。

 上記の非火山性温泉のほかに、岩盤の割れ目を通って循環する比較的新しい天水からも、温泉が生じる可能性のあることが指摘され、「割れ目系循環型温泉」と名付けられています。モンゴルの首都ウランバートルの西南西約700kmに位置する、バヤンホンゴル州シャルガルジュートの温泉がその例ではないかと考えられています(由佐・田籠、2001)。

執筆者由佐悠紀)
参照

火山性温泉


参考文献

吉川恭三・北岡豪一(1981):「大分市温泉の現況」、大分県温泉調査研究会報告、32号、56-64.
野田徹郎(1981):「大分市内温泉の化学的特性」、大分県温泉調査研究会報告、32号、71-77.
由佐悠紀・田籠功一(2001):「モンゴル・バヤンホンゴル州のシャルガルジュート温泉について」、温泉科学、51巻、51-61.