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| 種類 | 陽子数 | 中性子数 | 存在度(%) |
| 1H | 1 | 0 | 99.9885 |
| 2H(D) | 1 | 1 | 0.0115 |
表2に、酸素(原子番号8)の代表的な安定同位体と存在度を示します。酸素のほとんどは質量数16の軽いもの(16O)で、次いで質量数18の重いもの(18O)です。
したがって、両元素の化合物である水にも軽い水や重い水がありますが、ほとんどの水は「1H」と「16O」の化合物「1H216O」で、このことをはっきりさせたいときには、「軽水」と呼びます。他方、質量数の大きい同位体を含む水は「重水」と呼ばれます。
表2.酸素の安定同位体
| 種類 | 陽子数 | 中性子数 | 存在度(%) |
| 16O | 8 | 8 | 99.757 |
| 17O | 8 | 9 | 0.038 |
| 18O | 8 | 10 | 0.205 |
天然の水は、「圧倒的に多量な軽水」と「極微量の重水」の混合物ですが、混合の割合から水の起源を推定することができます。具体的には、水素と酸素それぞれの安定同位体組成を測定して判定します。ただし、同位体の化学的性質は同じなので、化学反応を利用した分析法は使えず、質量の違いを利用した質量分析計を用いて分別します。
これによって、温泉水のほとんどは天水(降水)起源であることが明らかになりました。別府温泉の水も天水起源として説明できます。他方、九重硫黄山の水蒸気には、マグマ由来の水(安山岩水)が含まれています。
各元素の安定同位体組成は、自然界の様々な現象や構造の研究に広く用いられています。たとえば、「氷床の氷」・「樹木」・「化石」・「鍾乳石」などの水素・酸素・炭素の安定同位体組成から、過去の気温(ひいては気候)の推定が行われています。
自然科学に関するデータ集「理科年表」には、最新のデータに基づいた安定同位体の詳細なリストが収録されています。
あんていどういたいひのそくていほう
水素を例にとって説明します。水素の安定同位体には質量数1のもの(原子核が陽子1個:軽水素,Hと表示)と質量数2のもの(原子核が陽子1個と中性子1個:重水素,Dと表示)の2種がありますが、圧倒的に多量なHの原子の量(数)に対するDの量(数)の割合を「安定同位体比」または「同位体比」と言います。以下では、簡単のため同位体比を用いることにします。
ある物質中の水素の同位体比を知るには、HとDの量を測定しなければなりません。ところが、原子番号は両者とも1、すなわち化学的な性質は同じなので、化学反応を用いた測定法(化学分析)は適用できません。
たよりになるのは、質量の違いです。ニュートンが確立した運動の第2法則は、たとえば、「物体に生じる速度の変化(加速度)は、かかった力に比例し、物体の質量に反比例する」と表現されます。
したがって、なんらかの方法で各水素原子に同じ力をかけてやれば、HとDに生じる加速度の大きさは異なるので(1:1/2)、両者を分離することができます。これが同位体比測定の原理で、その装置は「質量分析計」と呼ばれます。
実際の分析では水素分子が用いられるので、生じる加速度の比は上のとおりではありません。力をかける方法も含めて、具体的な内容は質量分析計の項で説明します。
あんていどういたいひのひょうきほう
「安定同位体比」は「同位体比」とも言います。以下では、同位体比を用いることにします。水素では、軽水素をH、重水素をDと表すものとします。酸素では、質量数16の酸素を16O、質量数18の酸素を18Oとします。自然界における、それぞれの元素の同位体比(原子の数の比)をD/Hおよび18O/16Oと表します。両者は、安定同位体の項の表1および表2の存在度から計算できますが、いずれも小さな値です。
さまざまな水の同位体比はそれらとは若干異なり、そうした違いから水の起源などを調べることができます。しかし、その違いはさらに小さいので、同位体比をそのまま比べるより、標準となる水の同位体比との差を比べる方が実用的で有効です。そこで、次のような表記法が考案されました。
| (1) | 標準の水試料は「標準平均海水」とし、SMOW(注)と表現する。 (注)SMOW:Standard Mean Ocean Waterのイニシャル。 |
| (2) | SMOWの水素および酸素の同位体比を(D/H)SMOWおよび(18O/16O)SMOWと書く。 (D/H)S・(18O/16O)Sと書くこともある。 |
| (3) | 試料Aの同位体比は、(D/H)Aおよび(18O/16O)Aなどと書く。 |
| (4) | 測定された試料Aの同位体比は、次のように定義されるδ(デルター)値として表現する。単位は千分率(‰,パーミル)である。 |
水素:δD =〔(D/H)A /(D/H)SMOW -1〕×1000
酸素:δ18O =〔(18O/16O)A /(18O/16O)SMOW -1〕×1000
試料Aの同位体比がSMOWの同位体比と同じなら、δ値は0となります。δ値が+5‰は試料Aの同位体比がSMOWより5/1000大きいことを意味し、-15‰は試料Aの同位体比が15/1000小さいこと意味します。
このようにSMOWとの差で表記すれば、別々の分析者や分析計によって得られた結果を、互に容易に参照し合うことができます。