中山先生レビュー部分

竹村先生レビュー部分

　ヒートショックプロテインは、生物細胞が熱などのストレスにさらされる際に体内で産生（誘導）され、細胞を保護するたんぱく質の一群である。最近、温泉療法においてこのタンパク質が注目されているのは、外部からの刺激を受けた体内のタンパク質について、破壊を修復したり変性を抑制したりするとともに、修復が困難な場合に分解して片づける機能を持っていることが明らかにされたからである。人体の場合、外部からの刺激には温熱ストレスのほか、重金属やアルコールなどの毒物、放射線、活性酸素、けがによる炎症、外科手術などがあるが、これらの刺激により傷ついた細胞の修復をつかさどるのがヒートショックプロテインである。実際に38～39度の入浴に際し、これらの一種であるHSP70が最も多く誘導されることが分かり、ぬるめの温浴は、ストレス障害、疲労の回復、傷・打撲などの修復、免疫力を高めることなどに有効であり、このような意味において温泉療法の正当性が認められたと言って良いであろう。

（宮崎博文）

　熱湯が沸騰しながら噴出する源泉を沸騰泉と言います。熱水（液体）と水蒸気（気体）が共存している（注）ので、噴出口での温度は、その場所での沸点（１気圧下で100℃）になっています。沸騰泉を利用するに当たっては、二相状態の沸騰水を液体と気体に分離するのが普通で、そのための装置を、「気液分離装置」・「気水分離器」・「セパレータ」などと呼びます。別府では、簡単にタンクと呼ばれてきました。
　別府温泉の象徴である湯けむりのうち、高く立ち昇るものは、掘削泉である沸騰泉と噴気からの高温水蒸気が空中で凝結して霧状になったものです。

（由佐悠紀）

温泉の種類

　奈良時代・８世紀前半に編纂されたとされる豊後国（ほぼ大分県に相当）の風土記で、地名の由来やさまざまな伝承が記されています。概要や編纂のいきさつなどは、たとえば、下記文献(2)や外部サイトの「ウィキペディア」などを参照してください。
　速見郡の「赤湯泉（血の池地獄）」をはじめとして、豊後国８郡中４つの郡に温泉に関する記述があり、温泉県大分の面目躍如といった感じがします。
　下記の文献(1)は、現在店頭に出ている復原本です。(2)は全国の風土記の現代語訳です。

（由佐悠紀）

(1)沖森卓也・佐藤 信・矢島 泉：「豊後国風土記・肥前国風土記」、山川出版社、101p、2008.
(2)吉野 裕：「風土記」（東洋文庫）、平凡社、401p（風土記地名対照表40p付）、1969.

　温泉に限らず入浴すると浮力により体が軽くなるが、このとき体重を支えている全身の関節や筋肉の負担が軽くなり、筋肉や関節の障害、神経麻痺、リューマチなどによる運動障害のある人も楽に体を動かすことができるため、リハビリテーションに用いられている。体を動かす際の水の抵抗も水中運動による筋力強化や運動によるエネルギー消費を促進するために好都合である。

（宮崎博文）

　高温の水蒸気が噴出する源泉を噴気と言います。噴気には、掘削泉から噴出するものと、自然のものがあります。自然のもののうち、岩石の割れ目のように明瞭な噴出口は噴気孔と言います。硫黄成分の量が多い場合は、それぞれ「硫気」・「硫気孔」と言うことがあります。噴出口がはっきりせず、ある範囲から、どこからともなく蒸気が立ち昇っているような場所は「噴気地」と言います。
　別府温泉の象徴である湯けむりのうち、高く立ち昇るものは、掘削泉の噴気と沸騰泉の高温水蒸気が空中で凝結して霧状になったものです。

（由佐悠紀）

温泉の種類