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HOMEフィールド博物館温泉マイスター・ハイキングレポート>2018.10.28「地獄ハイキング 浜脇~上人ヶ浜コース・レポート」甲斐心也

温泉マイスター・ハイキングレポート

地獄ハイキング 「浜脇~上人ヶ浜コース」 参加レポート 

シニア・マイスター 甲斐 心也

NPO法人別府温泉地球博物館主催の地獄ハイキング2018年度の秋の第3回は、平成30年10月28日(日)、浜脇~上人ヶ浜コースでの開催でした。



東別府駅

 この日は秋晴れの好天に恵まれ、時折爽やかな秋風の吹く絶好のハイキング日和でした。
 別府市報やチラシの配布、新聞での案内などの事前に広報が功を奏し、13:30にJR東別府駅に集合した参加者は約30人に上りました。竹村先生と京都大学地球熱学研究施設の一般公開イベントで来別していた学生さん3名、小学生の男の子2人を連れたお母さん、来週の鍛錬遠足の下見を兼ねて参加した小学校の先生など、いつもにないバラエティに富んだメンバーで元気に出発しました!!



東別府駅集合風景

 このコースは昨年10/29の回のために用意された新コースですが、台風の接近で中止となり、2年越しで実現しました。



ガイドブック表紙

  スタート地点の東別府駅は、1911(明治44)年、豊州鉄道の浜脇停車場として開業し、1934(昭和9)年に東別府駅に改称されました。趣ある木造駅舎が残っており、市指定登録有形文化財になっています。近年では、新垣結衣・三浦春馬主演の映画「恋空」のロケ地になった事で話題になりました。

 浜脇1丁目の住宅街に「丸井戸」があり、いつもは蓋をされているのですが、この日はつるべが用意されていました。すぐ裏にある秋葉神社の秋祭りで、お神輿の巡行があり、それに備えての事だそうです。井戸水やおやつをお接待していただき、出発早々の小休止となりました。



丸井戸

 少し歩いて浜脇温泉前の広場に到着しました。入口近くの石造りのアーチは、建て替え前の浜脇温泉の玄関で、床のタイルで当時の浴槽の位置や大きさが偲べるようになっています。ちなみに浜脇高等温泉は湯治客向けであったためぬるめの湯で、浜脇温泉は地元民向けに熱めになっていたそうです。



浜脇温泉

 朝見川の河口近くに架かる橋の上にきました。満潮に近い時間だったらしく、ゆったりとした流れが見られました。ここで竹村先生から「浜脇温泉の源泉はどうなってるの?」との質問が飛び出しました。「市営給湯線のラクテンチ下の雲泉寺タンクからの引き湯です。」と答えると、「純粋な浜脇源泉はないのと?」と聞かれ、「すぐそこの新玉旅館と二幸荘の2つの旅館だけが浜脇源泉です。」とお答えしました。このところ、地獄ハイキングでは突然の質問やガイドの要請が飛び出すので、油断がなりません。



朝見川

 浜脇温泉から別府温泉に入ってきました。両地区の境は松原公園だという事ですが、厳密な区分けはない様です。

 市営永石温泉に到着しました。このあたりは海抜3.8mで、大津波が到達する場所で、JRの線路が走る海抜10mより上に避難しなければ危険だと教えていただきました。



永石温泉

 流川4丁目の交差点に伊能忠敬測量碑が建っています。流川通りはかつての別府のメインストリートで、不夜城といわれたほどで、旅館や土産物屋・多くの商店が立ち並んでいました。
 織田作之助の「続夫婦善哉」では、大阪で食い詰めた柳吉と蝶子は流川通の裏通りに化粧品の店を出します。いつかは流川通に店を持ちたいというのが二人の合言葉になるほどだったのです。



伊能忠敬碑

   アーケード街を抜けて竹瓦温泉に着きました。明治時代はこの辺りは砂浜の海岸で、浜からは温泉が湧いていました。そこに粗末な湯小屋を建て、半割の竹で屋根を葺いたのが竹瓦温泉の始まりです。現在の建物は1938(昭和13)年に完成したもので、2004(平成16)年に国の登録有形文化財に指定されました。
 竹瓦温泉は3つの源泉を持っており、男湯用は浴室前の植え込みの下にあります。コンプレッサーによる汲み上げですが、源泉がそのまま浴槽に注がれています。



竹瓦温泉

 竹瓦温泉の裏手に波止場神社があります。1878(明治3)年初代日田県知事の松方正義により別府港が築かれ、波止場の鎮守としてこの神社がお祀りされました。
 「神様、仏様、稲尾様」と言われた西鉄ライオンズの稲尾和久投手は、神社のすぐ横の路地で生まれ、漁師だった父親を助けて舟を漕いだり、神社の境内でキャッチボールをしたりして、幼年期を過ごしました。その後、西鉄ライオンズに入団し、1958(昭和33)年の日本シリーズでは、巨人軍を相手に3連敗から4連投で勝利し、「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれました。


波止場神社

 国道10号線を渡って北浜公園に着きました。この辺りは海抜2.5mで、昔から高潮の被害を受けてきた地域です。ヨット艇庫の向こうに旧別府港の石造りの桟橋が見えます。
 北浜海岸には高さ5mを超える高潮堤防が築かれていて、海岸と陸地が切り離されています。現在、北浜ホテル街の護岸の改修工事が進められており、芝生を植えこんだ広場ができ、スロープや階段を配置して、高さ6.7mの護岸から海が眺められるようになります。



北浜ヨットハーバー

 北浜ホテル街の北には、的ヶ浜公園と人工砂浜のスパビーチが広がっています。スパビーチの砂は花崗岩組成の白砂ですが、別府には花崗岩はなく、本来は角閃石安山岩の黒い砂であるべきとのお話がありました。



スパビーチ

 スパビーチの先には市営温泉の北浜テルマスがあり、水着で泳げる温泉プールがあります。その先の若草漁港を過ぎると、境川の河口に出ました。境川は別府扇状地を形作った火砕流や土石流が流れ下ったあとで、本来は水無川です。

 境川を渡ると餅ヶ浜海岸が広がっています。ここでも花崗岩の切石が土留めとして使われ、砂浜の砂も花崗岩の白い砂です。堤防の上にはクロマツが植えられていますが、横に伸びた枝の段数を数えれば、松の生育年数が判ることを教わりました。ここの松は10~13年生のようで、護岸工事が行われたのはおおよそ10年前である事が判りました。



餅ヶ浜海岸

 的ヶ浜、弓ヶ浜、餅ヶ浜と3つのゆかしい名の海岸が続いていますが、これは平安末期の武将、鎮西八郎源為朝伝説に由来します。剛弓の使い手として知られた為朝が的ヶ浜に30間ごとに的を置き、馬上から射抜いたことから的ヶ浜といわれ、男が5~7人がかりで弓を張ったという弓ヶ浜、その弓を立てかけた弓かけの松、好物の餅を食べたという餅ヶ浜の地名が今でも残っています。

 餅ヶ浜海岸と別府国際観光港の間に長い桟橋が伸びていました。これは別府港に停泊して観光施設となったオリアナ号に渡るための桟橋の跡です。クルーズ船を引退した1986年、大和ハウス工業が購入し、1987年に大分県別府市の別府港でマリーン・ミュージアム SSオリアナとしてオープンしました。  私はこのオリアナ号に足を踏み入れる機会はありませんでしたが、バブル景気の始まりが1986年12月ですから、ちょうどその時期に別府にこの船が停泊していたのだなぁという感慨に耽りました。



オリアナ

 別府国際観光港に着きました。1958年に旧別府港からここへ機能が移転されました。広別汽船の広島航路で使用していた第一埠頭は使用休止中。第2埠頭には宇和島運輸の八幡浜航路、第3埠頭には関西汽船の神戸・大阪航路のサンフラワー号が就航しています。



別府国際観光港

 春木川河口に架かる橋を渡ると、第4埠頭に着きます。ここは2011年3月供用開始し、大型クルーズ客船の発着増加を目指し、大型船が接岸できる10mの岸壁を有しています。また、客船が寄港するのに欠かせない税関・入国管理・検疫(CIQ)の手続きをする臨時事務所を開設されています。

 ゴールの上人ヶ浜海岸に到着しました。南端に市営の別府海浜砂湯があります。ここで使われる砂は黒い砂で、別府産の砂だろうという事でした。更に北に進むと、松林が広がり、大小の岩がゴロゴロと転がる海岸がありました。この岩は通称別府石とよばれる角閃石安山岩(デイサイト)で、約2万年まえの鶴見岳の噴火で生まれました。



上人ヶ浜
 

海岸保全対策看板

この海岸の高潮対策は特別なもので、自然の海岸を残すため、平成24年度より潜堤の工事に着手し、平成25年9月に整備が完了しました。つまり、海岸から沖合200mに潜提を作り、高潮を防止するとともに、漁礁や増殖場の役目を期待するものです。そもそも、この海岸はサザエやナマコ、アイナメ、カサゴ、メバルなどの多様な魚種が生息しており、よい漁場となっています。また、潜提上にはワカメやヒジキなどの海藻が茂り、漁獲の対象となっています。

 これで今回の地獄ハイキングの全コースを踏破しました。7km17地点をガイドしながら、かなりの速足で歩きぬきました。参加者の皆さんが健脚であったのが幸いして、どうにか予定どおりに到着する事ができました。
 ただ、浜脇温泉から竹瓦温泉までは省略して、東別府駅から浜脇海岸を通るコースに変えて、国道10号線の東側に限定してもよかったかもしれません。今後の課題としておきます。

 ご指導いただいた竹村先生、参加者の皆さん、ありがとうございました。
 次回の「地獄ハイキング」は、今年度のフィナーレ、温泉マイスター限定になりますが、新コース「明礬~小倉~照湯コース ♨明礬温泉地熱地帯とアボイド・エリアの温泉発電所を歩く♨」を11月24日(土)に開催します。ハイキング後は地熱観光ラボ「縁間」での極楽コースも予定しています。マイスターの皆さん、奮ってご参加下さい。


 

フィールド博物館

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